10.運命の輪 (X.Wheel of Fortune)の意味、解釈、リーディング
運命の輪は、「チャンス」「好機」というような解釈をされがちなカードですが、本質的な意味は「運というものはコントロールできないものだ」「諸行無常」「人生や運命は不動ではなく流動している」という概念です。
これらの概念をベースにしたうえでリーディングをしていきましょう。
9番の隠者のカードでは自分の努力や経験の積み重ねが叡智となることを示しました。
10番の運命の輪は、“その先”に進んだ視点なのです。
大アルカナ | 10番 |
宇宙観 ※諸説あり |
木星(拡大、広がり) |
カードからのメッセージ | 人物が描かれていないこのカードは、「人智を越えた目に見えない動き(運)がある」ということを表しています。 |
キーワード・キーセンテンス
隠者の逆位置
逆位置では、上記のキーワード・キーセンテンスのエネルギーがうまく流れていない状態や過不足を意味します。
運気の流れが変わる
目まぐるしく変化しすぎる
スローになる、停滞する、進展がなくなる
待ちの姿勢、慎重な姿勢を取ったいいことのほうが多い
変化に反応できていない、変化に対応する能力が無い
変化を恐れて心を閉ざす
同じことを繰り返す
視野が狭くなっている
ときおり、「とんとん拍子であれよあれよと事が進んでとても驚いた」ということがあります。逆に、「それまでうまくいっていたのに、ある時を境にうまくいかなくなってしまった」…だれもがこんな経験をしたことがあるでしょう。それはコントロールのしようがない“運の流れ”であり、季節が変わることと同じです。つまり、その季節に合わせた生き方、判断、行動をしていくことが大事です。
絵に注目してみましょう
青いスフィンクスとソード……スフィンクスは戦車のカードにも登場しました。そしてスフィンクスの青い色は、女教皇がまとっている青いドレスと同じ色です。高い霊性を表します。古代エジプトにおいてスフィンクスは、「あの世」「冥界」の入り口の守護者としての信仰がありました。また、謎解きに正解できなかった人間を食べてしまうギリシア神話からも「知識」と「死」を連想させます。ソード(剣)は風のエレメントに対応しており、決断・判断・思考・言語・知性などを意味します。
ヘビ(テューポーン)とアヌビス……台風typhoonの語源になったというテューポーン、オオカミの頭を持つ人型は死者の眠りと来世の守護神・アヌビスが車輪に接しています。アヌビスはミイラづくりの神でもあります。(ジャッカルだと思われていたが、生息地的にどうやらオオカミらしい)
人間が決してコントロールできない災害(テューポーン)と死は、まさに運命の輪が象徴するものです。
車輪の文字、マーク……車輪の外側にあるアルファベットは、上から時計回りに読むとTAROとなり、真下を起点に読むとROTA(車輪)となります。
TORA(トーラー)は、女教皇が手にしていたのを覚えているでしょうか?この宇宙の大いなる原理や真理、あるいは律法が書かれています。
また、TORAの文字とは別に4文字のヘブライ文字(יהוה)がありますが、これは「ヤハウェ」と読みます。旧約聖書における天地創造の神のことです。
車輪の内側に描かれているマークは、上の☿マークが水銀、右の三角が硫黄、左の丸が塩で、この3つをパラケルススの記号といいます。下の♒マークが水(水瓶座のマーク)。この4つは錬金術と大きな関りがあります。
四隅の天使、動物……
翼のある獅子(マルコの象徴・火)
翼のある雄牛(ルカ・地)
翼のある鷲(ヨハネ・風)
翼のある人間、天使(マタイ・水)
この4つのシンボルは四大元素(火・地・風・水)をあらわしています。西洋占星術の考えで、牡牛座は地、獅子座は火、蠍座は水、水瓶座は風に振り分けられているのです。
あまり馴染みがありませんが、蠍座の表象として鷲(わし)が描かれ、水瓶座の表象として人が描かれることがあります。
さて、その4つのシンボルがそれぞれ本を持っているのは、運命というものを預言として捉える文化のためではないかと著者は考えています。神の言葉を人々に伝えるのが預言者です。
人智をはるかに越えたところで動き続ける運命を表しているのでしょうか。
(豆知識)
旧約聖書において四大預言書とされる預言書はその預言者の名前から『イザヤ書』、『エレミヤ書』、『エゼキエル書』、『ダニエル書』と言われています。
運命の輪の絵には、人知を越えた神による作用としての「運命」が強調が見られます。人のコントロールが及ばないからこそ、私たちは信仰心と、そして同時に理論的な姿勢が必要なのかもしれません。それは、これまでに共通点が見られた女教皇や戦車のカードに含まれているメッセージでもあります。
アファメーション
まとめ
運をコントロールしようと躍起になると、最も大事なことを見失ってしまいかねません。大事なこととは「動機」です。今起きている変化をどう感じているか?自分の心に問いかけてみましょう。流れに乗っていこうと思えていますか?それとも翻弄されているように感じますか?