【コラム】恋人カードの天使について─旧約聖書「アダムとイブ」、旧約聖書続編「トビト記」─

コラム・大アルカナ

恋人(Ⅵ.The Lovers)のタロットカードリーディングお役立ちコラムです。

ウェイト版タロットの【恋人】の絵は、
旧約聖書創世記のアダムとイブ(エデンの園)
旧約聖書続編トビト記
を知っているか否かで理解に大きな差が生じますので、このコラムで簡単にあらすじを確認していきましょう。

さて、アダムとイブを見守り導いている天使はミカエルでしょうか?ラファエルでしょうか?

本章『恋人(Ⅵ.The Lovers)』のページに書きましたが、著者としてはミカエル説を採用しています。ここではラファエル説として考えられそうなトビト記について書きます。

6.恋人(Ⅵ.The Lovers)

6.恋人(Ⅵ.The Lovers)

恋人(Ⅵ.The Lovers)の意味・リーディングは本章『恋人(Ⅵ.The Lovers)』をご覧ください。

アダムとイブ、エデンの園からの追放と失った永遠の命

旧約聖書創世記の「アダムとイブ(エデンの園)」概要

アダム(男)がエデンの園で何不自由なく暮らしていると、神様はこう言いました。

『この楽園にあるどの果実も食べてよいが、園の中央に生えている木の果実(善悪を知る木の果実)は、決して食べてはいけないよ。食べたら死んでしまうよ』

アダムはその言いつけを守り、イブ(女)とエデンの園(楽園)で睦まじく幸せに暮らしていました。

しかし、最も賢い生き物であるがイブに近づき……『その果実を食べても死ぬなんてことはない。むしろ、それを食べれば神様のようになれる』とそそのかします。イブはアダムを誘って善悪を知る木の果実を食べてしまいます。

善悪を知ったことで、アダムとイブは裸でいることが恥ずかしくなり、イチジクの葉で体を隠します。

それはたちまち神の知るところとなり、アダムとイブは楽園から追放されました。自分たちで食べ物を苦労して作ったり、狩ったりしなければならなくなったのです。同時に、命の木へ近づくことも許されなくなり、永遠の命を失いました。

エデンの園と人間の堕落(ルーベンス、ヤン・ブリューゲル画)フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』─禁断の果実─より

エデンの園と人間の堕落(ルーベンス、ヤン・ブリューゲル画)フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』─禁断の果実─より

なぜそんな大事な木が園の中央に生えているのか?

誰もが抱く疑問でしょう。

著者なりの考えになりますが、神様は、あえて選択肢を用意したのではないでしょうか。ただ与えられたものを受け取るだけでは、工夫も楽しさも存在しません。「園の中央に生えている木からは食べない」という選択肢を選び続けることができれば、それはすなわち善の実践だからです。

私たち人間は、純真無垢であること(なんの疑いも持たずに楽しく暮らすこと)と、善悪を知る(知恵を得る)ことの両立は不可能なのかもしれません。

親の庇護のもとで純粋な子ども時代を過ごしますが、大人になるにつれて見えてくるものがあります。それは例えば、他の生き物の命をもらって生きている事実や、世間の理不尽さ、悪意などです。

家を出て一人で生きていくようになると、友人に支えられたり、ライバルと競ったり、会社や仕事などに取り組んだりしながら、挫折や妥協を覚えていきます。

だからこそ、深い関係である恋人や家族、パートナー、親友とコミュニケーションを取り、助け合っていくことが大切なのです。それは結婚である必要はありません。場所や仕事、趣味などが人生の伴侶であることもあります。

大切なのは、苦楽を共にする関係です。自分が助けたり・助けてもらったり、誰かや何を心から慈しみ・慈しまれる関係なのですから。

旧約聖書続編「トビト記」

さて、それではカードの中央に大きく描かれている天使ラファエルが登場する「トビト記」のあらすじです。※私なりのあらすじ・要約となりますことご了承ください。

「トビト記」のあらすじ・概要

信仰心篤いトビト

大変に信仰心の篤く、心優しいトビトという男性がいました。彼の人生には多くの試練がありましたがトビトはいつも信仰を忘れませんでした。

しかし、ある時、雀の糞が両目に入ってしまい失明してしまいます。失明がきっかけで、絶望の淵に佇むトビト

そのころ、結婚するはずの夫たちを次々と悪魔アスモデオスに殺されたサラという娘が首をつろうとしていました。7人もの夫を殺されたサラは殺人を疑われたのです。

人生の終わりを願うトビトサラの声は神に届き、ふたりを癒すために天使ラファエルが送られました。

─トビトの目が再び開かれ、神の光が見えるように。そして、サラから悪魔を引き離し、真の運命の相手であるトビヤ(トビトの息子)と出会わせるために─

天使ラファエルによって出会う運命のふたり

死を覚悟したトビトは、大事な用事のため息子のトビヤにメディア地方のラゲスまで旅をするようお願いします。

そこでトビヤはメディアまで道案内をしてくれる同行者を探すことに。すると、天使ラファエルが人間の姿と名前で現れ、一緒に旅をすることになりました。

旅の途中で、トビヤ天使ラファエルに言われた通り魚を捕まえます。

フランシスコ・デ・ゴヤ 「トビアスと大天使ラファエル」 (1786-1788)

フランシスコ・デ・ゴヤ 「トビアスと大天使ラファエル」 (1786-1788)

天使ラファエルは「その魚の胆のう、心臓、肝臓は薬になります。胆のうは目に効き、心臓と肝臓は悪魔や悪霊に取り憑かれている人に効きます」と言うのでした。

その後、天使ラファエルトビヤサラを出逢わせ、ふたりは結婚へ。無事に、サラから悪魔を祓ったのでした。

ここで、トビヤサラはこんな会話をします。

 

神はアダム(男)をお造りになり、助け合って生きていくために妻のイブをお造りになりました。そのふたりから人類は生まれ、増えたのです。
神は「人が、独りで生きるのはよくない。彼の姿に似せた人を造ろう」とおっしゃいました。
私は情欲のためではなく真理のためにこの女性と結婚します。私たちに神の恵みがありますように。年老いるまで一緒に過ごすことができますように。アーメン

(すみません、めっちゃ意訳です)

 

また、トビヤサラの披露宴に旅の目的である大事な用事の相手をラファエルが連れてきてくれたのでした。

大団円へ

婚礼のお祝いのあと、トビヤトビトのもとへ帰り再会を大いに喜びます。そして、魚の胆のうによってトビトの視力は回復し、息子トビヤとその妻サラを祝福します。

トビトトビアラファエルに報酬を渡したいと考えていると、ラファエルは二人を呼んでこう言いました。「私は七人の天使の一人、ラファエルです」と。
すべては神の意思によってなされたことを告げて、天に昇っていったのでした。

 

 

ラファエルは、癒し、医薬、旅、悪霊悪魔祓いなどについての守護天使です。

ちなみに、魚の心臓と肝臓を燻した煙で悪魔・悪霊を祓うのだそうですが、日本でも節分にイワシと柊で邪気祓いをしますね。イワシを燻した煙はとても臭いそうです。時代と国が違うのになんとなく似ているのが興味深いですね。

恋人(Ⅵ.The Lovers)の意味・リーディング:本章『恋人(Ⅵ.The Lovers)』をご覧ください。
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